この記事を読むことで、以下のメリットが得られます。
- 企業が守るべき法的な義務を確実に果たす方法が分かります。
- 従業員との無用なトラブルを未然に防ぐ具体的なヒントを得られます。
- 会社の信頼性と安定性を高め、働きやすい職場環境を築くきっかけが見つかります。
雇用契約書がないことで生じるリスクとは?
従業員を雇用する際、「口頭での合意だけで十分では?」とお考えの経営者様もいらっしゃるかもしれません。
なお、雇用契約書そのものの作成は法律上の義務ではありませんが、労働条件を書面等で明示することは法律で義務付けられています。
そのため、雇用契約書(労働条件通知書)の不備や未交付は、企業の信頼を損ねるだけでなく、さまざまなリスクを引き起こす可能性があります。
具体的には、次のような課題が挙げられます。
- 法的な義務違反の可能性
労働基準法では、労働条件を労働者に明示することが義務付けられています。書面等での明示がない場合、法的義務違反となり、罰則の対象となる可能性があります。 - 労使間のトラブルの温床
賃金、労働時間、休日、異動の可能性など、労働条件に関する認識の齟齬は、「言った、言わない」の水掛け論に発展しがちです。これが信頼関係の悪化や紛争の原因となることもあります。 - 従業員の不安と離職率上昇
自身の労働条件が不明確であることは、従業員にとって大きな不安材料です。安心して長く働ける環境を提供できないと、早期離職につながるリスクも高まります。 - 採用活動への悪影響
万が一トラブルが発生し、企業の評判が低下すれば、優秀な人材の獲得にも支障をきたす可能性があります。
制度のポイント:労働条件明示義務の基本と2024年改正の要点
雇用契約書が重要とされる背景には、労働基準法で定められた「労働条件の明示義務」があります。企業には、従業員を雇用する際に、特定の労働条件を書面で明示することが義務付けられています。
労働条件通知書とは?雇用契約書との関係
労働基準法が企業に義務付けているのは「労働条件通知書」の交付です。
これは、企業が従業員に対して労働条件を明示するための書類です。
一方で「雇用契約書」は、企業と従業員双方が労働条件に合意したことを証明する書類です。
署名や押印をもらうことで双方の合意を確認する方法が一般的であり、トラブル防止の観点からも有効です。
そのため実務では、
「雇用契約書兼労働条件通知書」
として作成し、企業と従業員がそれぞれ控えを保管する形が多く採用されています。
【2024年4月1日施行】改正労働基準法施行規則のポイント
2024年4月1日より、労働基準法施行規則が改正され、労働条件の明示事項が追加されました。
この改正により、すべての労働者に対して、以下の事項の明示が義務付けられています。
就業場所・業務の変更の範囲
例
「就業場所:〇〇事業所。ただし会社が定める場所へ変更する可能性あり」
「業務:営業職。ただし会社が定める業務へ変更する可能性あり」
このように、将来の変更の可能性とその範囲を明示する必要があります。
有期雇用労働者に追加された明示事項
有期契約の労働者については、さらに以下の事項の明示が必要です。
- 更新上限の有無と内容
例:「契約更新は〇回まで」「通算契約期間は〇年まで」など - 無期転換申込機会
通算5年を超える場合、無期転換を申し込める権利があること - 無期転換後の労働条件
無期転換後の賃金・就業場所・業務内容など
明示が必要な主な労働条件(絶対的明示事項)
労働基準法では、**必ず書面等で明示しなければならない「絶対的明示事項」**が定められています。
主な内容は次のとおりです。
- 労働契約の期間に関する事項
- 就業の場所および従事すべき業務(変更の範囲を含む)
- 始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇
- 賃金に関する事項
- 退職に関する事項(解雇事由を含む)
また、有期雇用労働者については、
- 更新上限の有無と内容
- 無期転換申込機会
- 無期転換後の労働条件
の明示も必要となります。
会社がとるべき対策:トラブルを防ぐ雇用契約書作成のポイント
法令遵守はもちろん、従業員が安心して働ける環境を整えるためにも、適切な雇用契約書の作成と運用が重要です。
書面または電磁的方法による交付
労働条件は、
- 書面
または - 電磁的方法
で交付する必要があります。
電磁的方法には、
- メール
- クラウドシステム
- Web交付
などが含まれます。
交付後は、従業員から合意の確認を得て、企業と労働者双方が控えを保管することが望ましいでしょう。
明示事項の網羅と具体性
労働基準法施行規則で定められている明示事項は、漏れなく記載する必要があります。
特に2024年の法改正により追加された
- 就業場所・業務の変更の範囲
- 有期契約の更新上限
などは、具体的に明示することが求められています。
曖昧な表現はトラブルの原因になるため注意が必要です。
会社の実情に合わせた契約書作成
厚生労働省のモデル様式は参考になりますが、
- 就業規則
- 賃金規程
- 雇用形態
に合わせたカスタマイズが必要です。
特に次の項目は会社ごとに内容が異なります。
- 試用期間
- 残業の取り扱い
- 配置転換
- 休職制度
などです。
既存契約書の見直し
すでに雇用契約書を運用している企業でも、
2024年改正に対応しているか
を確認することが重要です。
特に有期雇用労働者については、
契約更新時に最新の労働条件を明示する必要があります。
専門家への相談
法改正への対応や契約書作成には専門知識が必要です。
自社だけで対応することに不安がある場合は、
社会保険労務士などの専門家へ相談することで、
- 法的リスクの回避
- 適切な契約書作成
が可能になります。
まとめ
雇用契約書(労働条件通知書)の整備は、単なる法的義務にとどまらず、従業員との信頼関係を築くための重要な基盤です。
2024年4月1日の法改正により、労働条件の明示事項はさらに強化されました。
適切な雇用契約書の整備は、
- 労使トラブルの予防
- 従業員の安心感の向上
- 健全な企業運営
につながります。 ご不明点やご不安な点がございましたら、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。
