この記事を読むメリット
- 直行直帰における労働時間の判断基準が明確になります。
- 企業が取るべき具体的な労働時間管理の対策が理解できます。
- 労務リスクを未然に防ぎ、適切な職場環境を整備できます。
企業の課題:直行直帰の増加と労働時間管理の複雑化
近年、営業職や建設業、ITエンジニアなど、
さまざまな職種で従業員が直接取引先へ向かったり、
自宅へ直帰したりする「直行直帰」の働き方が増えています。
これは、業務の効率化や柔軟な働き方を実現する上で
有効な手段の一つといえるでしょう。
しかし、その一方で、
- 「移動時間は労働時間に含まれるのか?」
- 「どこからどこまでが労働時間としてカウントされるのか?」
といった労働時間管理に関する疑問や課題を抱える企業が増えています。
特に、50人から1000人規模の企業様においては、
多様な働き方に対応しつつ、法的な要件を満たした
適切な労働時間管理を行うことが求められています。
労働時間の把握が曖昧なままでは、
- 未払賃金のリスク
- 従業員の過重労働による健康障害
- 企業イメージの低下
にもつながりかねません。
厚生労働省の
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
でも、労働時間の把握については客観的な記録による管理が求められています。
そのため企業には、より一層正確な労働時間管理が求められています。
制度のポイント:直行直帰における労働時間の判断基準
直行直帰における移動時間が労働時間にあたるかどうかは、
一律に判断できるものではありません。
最も重要な判断基準は
「使用者の指揮命令下に置かれている時間かどうか」
という点です。
労働基準法や厚生労働省の考え方に基づくと、
一般的に以下のように判断されます。
1.通常の通勤時間
原則として労働時間には含まれません。
自宅から会社や事業場への通常の移動時間は、
労働者が私的に利用できる時間であり、
使用者の指揮命令下にないためです。
2.直行直帰時の移動時間
直行直帰の際の移動時間については、
状況によって労働時間と判断されるか否かが分かれます。
労働時間と判断される可能性のあるケース
移動中に業務遂行が義務付けられている場合
例えば、
- 移動中の電車や車内で報告書作成を指示されている
- 顧客へのメール返信を行うよう会社から指示されている
- 移動中にアポイント取得などの営業活動を行うことが求められている
など、移動中の時間が業務遂行として利用されている場合は
労働時間と判断される可能性があります。
移動自体が業務の一部として拘束されている場合
会社が移動方法や経路を指定し、
その移動自体が業務の一部として拘束されている場合も
労働時間と判断される可能性があります。
例えば、
- 会社の車両で機材を運搬する
- 業務用機材や大量のサンプルを持って移動する
- 移動中も業務指示に即応することが求められる
といったケースが考えられます。
業務に必要な物品の運搬を伴う場合
例えば、
- 重い機材を現場へ運搬する
- 工事資材を現場まで搬送する
- 商品サンプルを大量に持って営業活動を行う
など、運搬行為そのものが業務の一部である場合には、
労働時間と評価される可能性があります。
労働時間とは判断されにくいケース
単に移動しているだけの場合
移動中に業務指示がなく、
従業員が自由に過ごせる時間である場合には
労働時間とは判断されにくいとされています。
また、
- 移動手段を従業員が自由に選択できる
- 移動中に業務を行う義務がない
といった場合も同様です。
出張先への移動
遠隔地への出張の場合、
単に移動しているだけで使用者の具体的な指揮命令下にない場合には、
労働時間と判断されないことが多いとされています。
ただし、
- 移動中に業務を行うことが指示されている
- 業務対応を求められている
場合には、労働時間と判断される可能性があります。
3.事業場外みなし労働時間制との関係
直行直帰の働き方でよく話題になるのが
事業場外みなし労働時間制です。
事業場外みなし労働時間制とは
労働基準法第38条の2では、
労働者が事業場外で業務に従事し、
労働時間の算定が困難な場合には、
業務遂行に通常必要とされる時間を労働したものとみなす
と定められています。
この場合、
- 所定労働時間
または - 労使協定で定めた時間
を労働したものとして扱います。
直行直帰=みなし労働時間制ではない
重要なポイントは、
直行直帰だからといって
自動的にみなし労働時間制が適用されるわけではない
ということです。
例えば、
- スマートフォンで随時連絡が取れる
- 業務指示がリアルタイムで出される
- 業務報告が随時求められる
ような場合には、
労働時間の算定が困難とはいえない可能性があります。
適用には厳格な要件が必要
事業場外みなし労働時間制を適用するためには、
- 労働時間の算定が困難であること
- 労使協定を締結すること
- 対象業務やみなし時間を定めること
などの要件を満たす必要があります。
会社がとるべき対策
直行直帰の労働時間管理を適切に行うためには、
以下のような対策が重要です。
1.明確なルールの策定と周知
就業規則への明記
就業規則や関連規程に、
- 直行直帰の定義
- 移動時間の取り扱い
- 労働時間の判断基準
を明確に記載しておきましょう。
従業員への周知
ルールを作成しただけでは不十分です。
説明会や社内資料を通じて、
従業員に制度内容を理解してもらうことが重要です。
曖昧な運用は
未払賃金トラブルの原因になります。
2.労働時間の客観的な把握
厚生労働省のガイドラインでも、
客観的な方法による労働時間把握が求められています。
例えば
- 勤怠管理システム
- PCログ
- 業務開始報告
- GPS付き勤怠アプリ
などの仕組みを整備しましょう。
ただし、GPS等の位置情報を利用する場合には、
- 利用目的の明確化
- 管理方法の整備
- 従業員への説明
など、プライバシーへの配慮が必要です。
3.業務指示の記録化
移動中に業務を指示する場合には、
- 指示内容
- 指示時間
- 業務内容
を記録する仕組みを整えておくことが重要です。
日報や業務報告書に
- 業務開始時間
- 業務終了時間
- 移動中の業務内容
などを記録する方法も有効です。
4.管理監督者への教育
直行直帰の労働時間管理は、
管理職の理解不足で問題になるケースが多いです。
管理監督者に対して、
- 労働時間管理の基本知識
- 業務指示の出し方
- 労働時間の確認方法
について教育を行うことが重要です。
まとめ
直行直帰の労働時間管理では、
「使用者の指揮命令下にあるかどうか」
が判断の基本になります。
単なる移動時間は
労働時間とはならない場合が多いですが、
- 移動中に業務が指示されている
- 移動自体が業務の一部である
場合には、労働時間と判断される可能性があります。
また、事業場外みなし労働時間制は
労働時間の算定が困難な場合にのみ適用される制度であり、
直行直帰だからといって安易に適用できるものではありません。
企業は、
- 明確なルールの整備
- 客観的な労働時間把握
- 管理監督者の教育
を通じて、未払賃金リスクや過重労働を防ぎ、
適切な労働時間管理を行うことが重要です。 ご不明点やご不安な点がございましたら、
ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。
