「働き方改革」の一環として、従業員の副業・兼業を認める企業が増えています。
しかし、安易に解禁すると労働時間管理や健康管理などの面でリスクが生じます。 今回は、厚生労働省のガイドラインに基づき、企業が副業・兼業を認める際に知っておくべき重要ポイントをQ&A方式で解説します。
Q1.そもそも副業・兼業は認めなければならないのでしょうか?
原則として認める方向で検討することが適当です。
裁判例において、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるとされています。そのため、原則として副業・兼業を認める方向で就業規則を見直すことが求められます。ただし、無条件に認める必要はありません。以下のようなケースでは、禁止または制限することが可能です。
- 労務提供上の支障がある場合(本業に支障が出るほどの長時間労働など)
- 企業秘密が漏洩する場合
- 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
- 競業により、企業の利益を害する場合
Q2.副業・兼業を導入するための最初の手順は?
就業規則の整備と届出制の導入が必要です。
まずは就業規則を確認し、副業・兼業を原則禁止としている場合は、容認する内容へ変更しましょう。その際、労働者からの「届出制」を導入し、副業先の内容や労働時間等の情報を事前に確認できる仕組みを作ることが重要です。 事前に情報を把握することで、Q1で挙げた禁止・制限事項(競業避止や秘密保持など)に該当しないかを確認できます。
Q3.最も注意すべき「労働時間の通算」とは何ですか?
自社と副業先の労働時間を合計して管理するルールです。
労働者が自社と副業先の両方で「雇用」されている場合、労働基準法第38条に基づき、労働時間は通算(合算)して管理しなければなりません。通算した結果、法定労働時間を超える部分については、時間外労働(残業)となり、割増賃金の支払い義務が生じる可能性があります。原則として、後から労働契約を結んだ企業(多くの場合、副業先)がその管理と支払いの責任を負いますが、状況によっては自社にも影響があるため、副業先での労働時間や契約内容を把握することが必須です。
【対策:管理モデルの活用】 労働時間の計算が複雑になるのを防ぐため、「管理モデル」という簡便な方法も推奨されています。これは、副業開始前にそれぞれの会社での労働時間の上限(枠)を設定し、その範囲内で働くようにすることで、日々の細かい通算管理を不要にする仕組みです。
Q4.従業員の健康管理や労災保険はどうなりますか?
健康管理は企業の義務であり、労災給付額は合算されます。 副業を行っているかどうかにかかわらず、企業は健康診断やストレスチェックなどの健康確保措置を実施する必要があります。長時間労働による過労を防ぐため、副業の状況を踏まえ、必要に応じて時間外労働の免除や抑制を行うなど、労使で話し合うことが重要です。 また、労災保険については、制度改正により、複数の就業先の賃金額を合算して給付額が決定されるようになり、全ての就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定が行われるようになっています。
まとめ:トラブル防止には専門家のサポートを
副業・兼業の解禁は、優秀な人材の確保やスキルアップなどのメリットがある一方、労働時間管理の複雑化や情報漏洩リスクへの対策が必要です。 特に「労働時間の通算」や「管理モデルの導入」は実務上の判断が難しいため、就業規則の改定や制度設計については、社会保険労務士などの専門家へご相談ください。
