見せないと違法?退職金規定の周知義務と対策を解説

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見せないと違法?退職金規定の周知義務と対策を解説

退職金は、長年勤め上げた従業員の功労に報いるため、また、退職後の生活を支えるために非常に重要な役割を果たします。
多くの企業で導入されている制度ですが、その詳細な内容、例えば「自分はいくらもらえるのか」「どのような条件で支給されるのか」を正確に把握している従業員は意外と少ないかもしれません。
なかには、会社に退職金規定の開示を求めても、見せてもらえずに困っているというケースもあるようです。
そもそも、企業は従業員に対して退職金規定を開示する義務を負っているのでしょうか。
今回は、退職金規定の開示義務の有無や、開示しない場合に企業が直面する可能性のあるリスクについてご紹介します。

従業員への退職金規定の開示は義務か

結論から言うと、退職金制度を就業規則またはその一部として定めている企業には、従業員に対して退職金規定を周知・開示する義務があります。
これは法律で定められた企業の責任であり、従業員の求めに応じていつでも閲覧できる状態にしておかなければなりません。

労働基準法で定められた周知義務

労働基準法第106条では、企業に対して就業規則を従業員に周知させることを義務付けています。
退職金に関する事項は、就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」ではありませんが、制度として設け、かつ労使協定等で定めた場合には記載が必須となる「相対的必要記載事項」にあたります。
多くの場合、退職金規定は就業規則本体とは別の規程として定められますが、その場合でも就業規則の一部と見なされます。
したがって、企業は退職金規定を従業員に周知する義務を負うのです。

具体的な周知方法としては、以下のいずれかの方法が求められます。
・事業所の見やすい場所への掲示や備え付け
・従業員一人ひとりへの書面での交付
・社内ネットワークなどでデータとして保存し、従業員がいつでも内容を確認できる機器を設置する

在職中の全従業員が開示対象

この周知義務の対象となるのは、現在その企業に雇用されている「すべての労働者」です。
正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトといった非正規雇用の従業員であっても、退職金規定の適用対象者であれば、当然ながら開示の対象となります。
従業員から「退職金規定を見せてほしい」と申し出があった場合、就業規則として定められている退職金規定については、従業員から閲覧の求めがあった場合、企業は正当な理由なくこれを拒否できません。
もし正当な理由なく閲覧を拒否すれば、法律違反に問われる可能性があります。

退職者への開示義務は原則ない

労働基準法が定める周知義務は、あくまで企業と雇用関係にある「労働者」を対象としています。
そのため、すでに退職して雇用関係が終了している元従業員に対しては、原則として退職金規定を開示する義務はありません。
ただし、退職金の未払いなどで元従業員と企業との間に権利関係の争いがある場合は例外です。
紛争が生じている場合には、労働基準監督署への申告や、民事上の手続の中で規定内容が問題となる可能性があります。

「退職金規定を見せてもらえない」と訴えられた場合のリスク

従業員への退職金規定の開示を怠ることは、単に「不親切だ」という問題では済みません。
法律違反として、企業はいくつかの具体的なリスクを負うことになります。

30万円以下の罰金

退職金規定を含む就業規則の周知義務を怠った場合、労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
従業員からの申告などによって違反が発覚した場合、刑事罰の対象となることを認識しておく必要があります。

労働基準監督署による是正勧告

罰金刑に至らない場合でも、従業員が労働基準監督署に相談・申告することで、企業は行政指導を受ける可能性があります。
労働基準監督署は、企業に対して調査を行い、法律違反が確認されれば是正勧告を出します。
この勧告に従わない場合、さらなる罰則につながる恐れがあるだけでなく、企業の社会的信用を損なうことにもなりかねません。

規定自体の法的効力の喪失

企業にとって最も大きなリスクとなりうるのが、周知されていない規定の法的効力が認められなくなる可能性です。
判例では、就業規則が法的な効力を持つための前提条件として、従業員への適切な周知がなされていることが必要とされています。
つまり、従業員に知らせていない退職金規定は、たとえ内容が作成されていたとしても「存在しない」のと同じと判断される恐れがあるのです。
そうなると、例えば懲戒解雇の際に退職金を不支給または減額するといった、企業側に有利な条項を適用できなくなるなど、深刻な事態を招く可能性があります。

まとめ

退職金制度を設けている企業にとって、その規定を従業員に開示することは、労働基準法で定められた明確な義務です。
この義務を怠ると、30万円以下の罰金や労働基準監督署からの是正勧告といったペナルティを受けるだけでなく、最悪の場合、規定そのものが無効と判断されるという重大なリスクを負うことになります。
従業員との無用なトラブルを避け、健全な労使関係を築くためにも、退職金規定を適切に整備し、いつでも従業員が閲覧できる状態にしておくことが極めて重要です。

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