給与明細の変更点は?確定拠出年金導入と年末調整について解説

  • お役立ちコラム労務相談給与計算
給与明細の変更点は?確定拠出年金導入と年末調整について解説

企業で確定拠出年金の導入を検討したり、実際に導入したりすると、人事や労務の担当者の方は「給与明細はどう変更すればいいの?」「年末調整の対応は何か変わる?」といった実務的な疑問に直面することがあるのではないでしょうか。
特に、給与や税金に関わる部分は従業員の生活に直結するため、正確な知識をもって慎重に進めたいところです。
これらの手続きは一見すると複雑に感じられるかもしれませんが、ポイントを押さえればスムーズに対応できます。
今回は、確定拠出年金を導入した際の給与明細の記載方法や、年末調整で企業がすべきことについてご紹介します。

確定拠出年金は給与明細にどう記載するか

選択型の企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入すると、従業員の給与明細の表記を変更する必要があります。
これは、制度の仕組みと社会保険料の計算に関わる重要な手続きです。

生涯設計手当として支給項目に新設

企業型DCを導入する際、一般的に「生涯設計手当」という新しい手当を給与の支給項目に設けます。
これは、従来の給与の一部を原資として設定される手当です。
例えば、これまで基本給が30万円だった従業員に対し、制度導入にあたっては、労使合意のもと賃金体系を見直し、一部を「生涯設計手当」として位置づけるケースが一般的です。

基本給を25万円に、生涯設計手当を5万円に設定するといった変更を行います。
この場合、支給総額は30万円のままで変わりません。
従業員は、この生涯設計手当の中から、確定拠出年金の掛金として拠出するか、あるいは従来通り給与として受け取るかを選択します。
掛金として拠出した分は給与とはみなされず、社会保険料の算定基礎から除外されるため、従業員と企業の双方にとって社会保険料の負担が軽減されるというメリットがあります。(※社会保険料の軽減効果が生じるのは、生涯設計手当のうち、確定拠出年金として拠出した金額に限られます。)
給与明細上では、掛金額を支給項目の中でマイナス表記するなどして、総支給額を調整するのが一般的です。

加入対象者全員の給与明細を変更

ここでよくある間違いが、「掛金を拠出する従業員だけの給与明細を変更すればよい」と考えてしまうことです。
正しくは、掛金を拠出するかどうかにかかわらず、制度の加入対象となる従業員全員の給与明細を変更しなくてはなりません。
なぜなら、制度導入にあたって「生涯設計手当規程」などを就業規則に設けるのが一般的だからです。
この規程は加入対象者全員に適用されるため、全員の給与明細に生涯設計手当の項目を記載しないと、規程に反していることになります。
もし記載を怠った場合、後から従業員に「手当が支払われていない」と主張されるリスクも考えられます。
掛金を拠出しない従業員にとっては、手当として支給された分がそのまま給与として支払われるため、制度導入の前後で支給額が変わるわけではありません。
トラブルを避けるためにも、対象者全員の給与明細を正しく変更することが大切です。

従業員への丁寧な事前説明が不可欠

給与明細の項目が変わることは、従業員にとって大きな関心事です。
特に「基本給」の金額が減るため、何も説明がないと「給料が下がった」と誤解され、不安や不信感につながりかねません。
そのため、制度を導入する前には、全従業員に対して丁寧な説明会などを実施することが不可欠です。
説明会では、以下の点を明確に伝えましょう。
・確定拠出年金の仕組みと、老後の資産形成におけるメリット
・給与明細の変更点(基本給と生涯設計手当に分かれるが、支給総額は変わらないこと)
・掛金を拠出すると社会保険料の負担が軽くなるなどの税制上の優遇
・残業代などの割増賃金の計算基礎は、不利益が生じないよう「基本給+生涯設計手当」をベースにするなど、賃金規程も合わせて見直していること
従業員一人ひとりが制度を正しく理解し、納得したうえで自身のライフプランに合わせた選択ができるようサポートすることが、円滑な制度運営の鍵となります。

確定拠出年金の年末調整で企業は何をすべきか

確定拠出年金の掛金は、所得控除の一種である「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、所得税や住民税が軽減されます。
この控除を受けるために年末調整が必要になりますが、企業の対応は掛金の拠出方法によって異なります。

企業拠出のみなら年末調整は不要

まず、掛金をすべて企業が拠出しており、従業員自身の給与からの拠出が一切ない場合です。
このケースでは、従業員が支払った掛金はないため、所得控除の対象にはなりません。
したがって、企業側で確定拠出年金に関する特別な年末調整の作業は不要です。

マッチング拠出分は会社が年末調整

次に、企業が拠出する掛金に加えて、従業員自身も任意で掛金を上乗せする「マッチング拠出」を利用している場合です。
この従業員が拠出した分は、全額が所得控除の対象となります。
マッチング拠出の掛金は、企業が給与から天引きする形で徴収しています。
そのため、企業は年間の掛金総額を把握しています。
年末調整の際は、従業員に「給与所得者の保険料控除申告書」を配布し、「小規模企業共済等掛金控除」の欄に1年間の掛金合計額を記入してもらいます。
企業はその申告書の内容に基づき、年末調整の計算に反映させます。

iDeCo加入者からは証明書の提出を受ける

企業の制度とは別に、従業員が個人でiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入しているケースもあります。
iDeCoの掛金も同様に全額が所得控除の対象ですが、掛金は従業員の個人口座から引き落とされるため、企業はその金額を直接把握できません。
この場合、従業員本人が手続きを行う必要があります。
毎年10月~11月頃になると、iDeCoを運営する国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」というハガキが従業員の自宅に届きます。
従業員は、この証明書を「給与所得者の保険料控除申告書」に添付して企業に提出します。
企業の担当者は、提出された証明書の内容を確認し、記載された金額を年末調整の計算に含めることになります。
証明書の提出漏れがないよう、事前に従業員へ周知しておくことが重要です。

まとめ

確定拠出年金を導入する際には、給与明細に「生涯設計手当」を設け、加入対象者全員の明細を変更する必要があります。
従業員に誤解を与えないよう、事前の丁寧な説明が欠かせません。
また、年末調整においては、従業員の掛金の拠出方法によって企業の対応が変わります。
特にマッチング拠出やiDeCoを利用している従業員がいる場合は、所得控除の申告漏れがないよう、企業としてもしっかりと手続きをサポートすることが求められます。
これらの実務を正確に行うことは、従業員の資産形成を支えるという、福利厚生制度の本来の目的を果たす上で非常に重要です。

投稿の最新記事

Contact

お問い合わせ

お気軽にお問合せください!

お問い合わせ LINE相談