令和6年(2024年)10月より、従業員数51人以上の企業で社会保険の適用が拡大されました。 しかし、これで終わりではありません。令和6年6月に成立した年金制度改正法により、今後10年間で企業規模要件や賃金要件が順次「撤廃」されることが決定しています。 2027年、2029年、そして2035年に向けて、中小企業・小規模事業者が直面する未来と対策をQ&Aで解説します。
Q1.「51人以上」の次はどうなりますか?(2032年・2035年に向けて)
今後10年かけて、企業規模要件(人数要件)が段階的に撤廃されます。
これまでは「101人以上」「51人以上」と段階的に引き下げられてきましたが、今回の法改正により、企業規模にかかわらず、週20時間以上働く短時間労働者は社会保険に加入する方向へ舵が切られました。 この「企業規模要件の撤廃」は、急激な負担増を避けるため、10年程度(~2035年頃まで) をかけて段階的に進められる予定です。つまり、現在は対象外の「50人以下の企業」も、2032年、2035年といった近い将来、順次適用対象となる可能性が極めて高いといえます。
Q2.「年収106万円の壁」はどうなりますか?(2027年頃の予定)
2027年頃を目処に、月額賃金要件(8.8万円)が撤廃される見込みです。
現在、加入要件の一つに「所定内賃金が月額8.8万円以上(年収約106万円)」がありますが、これが撤廃されます。 時期は法律公布から3年以内で、最低賃金が全国的に1,016円以上となるタイミングを見極めて判断されます(概ね2027年頃)。 これにより、「労働時間を調整して加入を逃れる」という選択肢が事実上なくなり、「週20時間以上=即加入」というシンプルなルールに変わります。
Q3.個人事業所(飲食店・美容室など)への影響は?(2029年10月施行)
2029年10月より、業種に関係なく「5人以上」の個人事業所は適用対象になります。
現在、個人事業所は飲食・理美容などのサービス業(非適用業種)であれば、人数が多くても加入義務はありませんでした。 しかし、2029年10月からは、弁護士・税理士等の士業や、飲食・サービス業などを含む全業種の個人事業所について、常時5人以上の従業員がいれば社会保険の適用対象へと拡大されます。
Q4.小規模な企業への支援策はありますか?
新たに対象となる50人以下の企業等に対し、保険料負担を軽減する特例措置があります。企業規模要件の見直し等により、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者(標準報酬月額12.6万円以下)がいる場合、3年間の時限措置として保険料支援が行われます。 事業主が多めに負担する保険料分を国が支援する仕組みなどが導入され、手取り減少を気にする従業員様への対応がしやすくなります。
【社労士からのアドバイス】
「その時」になってからでは遅い
2024年の「51人以上」への拡大は序章に過ぎません。2027年の賃金要件撤廃、2029年の個人事業所拡大、そして2035年に向けた完全適用と、制度は「全労働者の加入」へ向かっています。 「うちはまだ小さいから関係ない」と思っていると、数年後に採用難や人件費高騰で経営が立ち行かなくなるリスクがあります。 当事務所では、長期的な視点での就業規則の見直しや、キャリアアップ助成金の活用など、将来の法改正を見据えた労務戦略をご提案しています。お早めにご相談ください。
