今こそ労務管理DXの時です
「DX」という言葉を聞いてまだ自社には関係ないと感じていらっしゃる企業様もいるかもしれません。しかし、労務管理におけるデジタル化つまり労務管理DXは、もはや待ったなしの状況と言えるでしょう。アナログな紙の運用に頼りがちな労務管理は、多くの企業様にとって負担となっている現状があります。一方、行政手続きのオンライン化やクラウドサービスの進化は目覚ましくこれらを活用しない手はありません。これからの時代を勝ち抜くためには、労務管理のDX推進が非常に重要となってきます。
現在の労務管理における課題
現在の紙ベースの労務管理では、以下のような様々な課題を抱えている企業様が多いのではないでしょうか。
- 業務の非効率性:
- 書類の作成、印刷、押印、郵送といった手間が日常的に発生しているでしょう。
- 大量の書類のファイリングや保管に時間がかかり、スペースも必要です。
- 必要な情報を探す際に書類の山から探し出す作業に時間を要することも少なくありません。
- 法改正への対応の難しさ:
- 労働関連法規は頻繁に改正され、常に最新情報をキャッチアップする必要があります。
- 紙ベースでの管理では改正内容を反映する作業に膨大な手間がかかり、対応が遅れるリスクも高まります。
- 多様な働き方への対応の遅れ:
- テレワークやフレックスタイム制など多様な働き方が広がる中で、紙の書類での手続きは従業員にとっても負担になることがあります。
- 遠隔地にいる従業員からの申請や手続きに時間がかかり不便を感じさせてしまうかもしれません。
- 情報セキュリティと個人情報保護のリスク:
- 紙の書類は紛失や盗難のリスクを常に抱えています。
- 個人情報を含む機密書類が多く、管理体制が不十分だと情報漏洩につながる可能性も考えられます。
これらの課題を解決しより効率的で安全な労務管理を実現するためには、DXの推進が不可欠となります。
DX推進の制度のポイントとメリット
国も労務管理のデジタル化を強力に推進しており、様々な制度や環境が整備されています。
1. 社会保険・労働保険の電子申請義務化とその背景
現在、特定の法人に対する電子申請の義務化が既に進められています。
- 対象と内容: 2020年4月1日より、資本金1億円を超える大企業など特定の法人においては、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届や喪失届、賞与支払届、そして労働保険の年度更新など、一部の手続きについて電子申請が義務化されています。これは厚生労働省が推進する行政手続きのデジタル化の一環です。
- メリット:
- 書類作成や送付の手間が省け、行政手続きの業務効率が大幅に向上します。
- 24時間いつでも申請が可能となり、申請期限直前の慌ただしい作業から解放されるでしょう。
- ペーパーレス化により紙や印刷コストの削減にもつながります。
義務化の対象でない企業様にとってもe-Gov(電子政府の総合窓口)などを活用した電子申請は非常に有効な選択肢と言えます。
2. 労働基準法関係帳簿の電子化
労働基準法では、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿などの作成・保存が義務付けられています。これらの帳簿についてもデジタル化が認められています。
- 法律上の扱い: 厚生労働省では「労働基準法関係帳簿等に関する情報通信技術を用いた保存について」という通達などにより、一定の要件を満たせば情報通信技術(ICT)を用いた保存が認められるとしています。例えば、必要な時に出力できること、改ざん防止措置が講じられていることなどが求められます。
- メリット:
- 物理的な保管スペースが不要になりオフィスを有効活用できます。
- 必要な情報を瞬時に検索できるようになり業務の迅速化に貢献します。
- データのバックアップが容易になり災害時などのリスク軽減にもつながります。
3. 働き方改革と勤怠管理のDX
2019年4月1日より順次施行された働き方改革関連法では、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の確実な取得など労働時間管理の厳格化が求められています。
- 対応の必要性: 労働時間を客観的に把握し法律に則った管理を行うことが企業に義務付けられています。
- メリット:
- クラウド型の勤怠管理システムを導入することで、従業員の労働時間を正確に記録・集計できます。
- 時間外労働の状況や有給休暇の取得状況をリアルタイムで把握し、法律違反のリスクを軽減できます。
- 集計作業の自動化により、給与計算業務の負担を大幅に軽減できるでしょう。
これらの制度活用は、単なる業務効率化に留まらず法令遵守(コンプライアンス)の強化にも直結します。
会社がとるべきDX対策:段階的なロードマップ
労務管理のDXは一度に全てを導入する必要はありません。段階的に進めることで、混乱を避けスムーズな移行を実現できます。
フェーズ1:基盤整備(まずはここから!)
まずは現状把握とデジタル化の土台作りから始めましょう。
- 現状業務の棚卸しと課題特定:
- 現在行っている労務管理業務を全て洗い出し、どこに時間や手間がかかっているのか紙運用のボトルネックはどこかを確認します。
- 優先的にデジタル化すべき業務を明確にすることで効果的なDX推進が可能になります。
- 電子申請環境の準備:
- e-Govの利用登録や、電子証明書の取得を進めることをお勧めします。これは電子申請を行うための第一歩となります。
- これにより、義務化対象外の企業様でも行政手続きのオンライン化の恩恵を受けられるようになります。
- 労働基準法関係帳簿の電子化検討:
- 労働者名簿や賃金台帳、出勤簿など現在紙で管理している帳簿を電子データで保存するための要件を確認します。
- Excelなどの表計算ソフトを活用しデジタルデータでの管理に移行できる部分から始めてみるのも良いでしょう。
フェーズ2:導入・運用開始(効率化を実感!)
基盤が整ったら具体的なシステムの導入と運用を開始します。
- クラウド型システムの導入:
- 勤怠管理システムや給与計算システム、人事情報システムなど、自社の規模や課題に合ったクラウド型のサービスを検討します。
- 初期投資を抑えつつ常に最新の法改正に対応できる点がクラウドシステムの大きなメリットです。
- 社会保険・労働保険の電子申請の本格運用:
- 導入したシステムと連携させながら、電子申請を本格的に開始します。
- 年金事務所や労働基準監督署、ハローワークへの手続きをオンラインで完結させることで、大幅な時間短縮が見込めます。
- 従業員への周知と教育:
- 新しいシステムの導入は従業員の協力が不可欠です。システムの操作方法や変更点を丁寧に説明し疑問や不安を解消することが大切です。
- 操作マニュアルを作成したり、説明会を実施したりすることで、スムーズな移行を促せるでしょう。
フェーズ3:連携・高度化(さらなる業務改善へ!)
システム導入後もさらなる業務改善を目指して最適化を進めます。
- 各システムのデータ連携:
- 勤怠管理システムと給与計算システムさらには人事情報システムなど、各システム間のデータ連携を強化します。
- これによりデータの二重入力の手間をなくし、転記ミスなどのヒューマンエラーを削減できます。
- マイナポータル連携の活用:
- マイナポータルを活用することで従業員自身が自身の社会保険情報などを確認できる環境を整備することが可能です。これにより
問い合わせ対応業務の削減にもつながります。
- 行政機関との情報連携もスムーズになりより高度な行政サービスへのアクセスが期待できます。
- セキュリティ対策の強化と定期的な見直し:
- デジタル化に伴い、情報セキュリティ対策はより重要になります。
- アクセス権限の管理、データの暗号化、定期的なバックアップなど、情報漏洩やシステム障害への対策を常に最新の状態に保つようにしましょう。
【まとめ】
労務管理のDXは、単にITツールを導入することに留まりません。それは、紙媒体に依存した非効率な業務プロセス全体を見直しデジタル技術を最大限に活用して、より効率的で正確、そして従業員にも優しい管理体制を構築する変革と言えるでしょう。
- 社会保険・労働保険の電子申請は一部企業で既に義務化されており、今後もデジタル化の流れは加速すると考えられます。
- 労働基準法関係帳簿の電子保存も認められており、ペーパーレス化によるコスト削減と業務効率化が期待できます。
- 段階的なロードマップに沿ってDXを進めることで、企業は法改正への対応力を高め、従業員満足度を向上させひいては企業全体の競争力を強化することができるでしょう。
DX推進は貴社の未来を拓くための大切な投資です。ご不明な点やご不安な点があれば、ぜひ当事務所へお問い合わせください。
